メーカーでの貿易事務の仕事内容(やりがい、あるある等) 

貿易事務

「就職するときは語学を使った仕事をしたい!」と考えている方もいるかもしれません。

その中で、語学を使った仕事を調べてみると「貿易事務」の仕事がでてくることが結構あったりして、貿易事務の仕事は一体どう言う仕事なんだろうなと疑問に思う方もいるかと考えます。

私は過去に物流業界(海運会社)に3年間、メーカーの海外営業部に6年間勤務した事があり、営業の期間が長かったですが、メーカーに居たときはインド地域担当の貿易事務としての1年ほど経験を積んだ事もありました。

営業に従事していても、同じ部署で貿易事務担当者の人と常に一緒に仕事をしていたので貿易事務に関する仕事について熟知しております。

今回は私の過去の経験からメーカー(または商社)における貿易事務の仕事について紹介していきます。

貿易事務の仕事内容・流れ

メーカー(または商社)での輸出の貿易事務の仕事は主に以下の通りです。(貿易事務では輸入の仕事も行う事がありますが、ここでは輸出の仕事にフォーカスして説明します)

  • 海外現地の客先からオーダーを受け取る
  • オーダーの内容を元に製造元や外注先に発注
  • 客先へのオーダー製品の納期通知、送金依頼
  • オーダー毎の納期管理
  • 出荷書類(Invoice, Packing list 他)の作成
  • フォワーダーへの製品の製品出荷の依頼、などなど

※会社によっては流れが異なるかもしれません。

私の会社ではこの流れの処理を同時並行でたくさん行っていくのが貿易事務の仕事です。

現地客先からオーダーを受け取る

私は貿易事務をしていた時はインドを担当していたので、インド客先から製品の受注があって仕事の流れが始まります。

受け取った注文書には具体的にオーダーする製品、数量、合計金額等が書いてあります。

そして注文書には必ずと言って良いほどTerms and Conditions (注文に関する規定)が書かれています。そこには取引条件、支払条件、要求納期、保証期間、納期が守れなかった場合の罰則等が書かれていて、これらの内容は担当営業の人にこの内容で了承して良いのか確認しなければなりません。

オーダーの内容を元に受注計上、発注作業

上記のオーダー内容の確認を行なって問題なければ、このオーダーの受注計上を上げます。

それにより営業担当は営業実績としてカウントされます。

その後、オーダーの内容を元に製造部門、外注先に発注作業を行います。

客先へのオーダー受領書の提出と納期通知

製造部門や外注先から納期を教えてもらったら、オーダー受領書を客先に渡し、納期の通知を行います。

このオーダー受領書では、注文書で書いてあったTerms and Conditionsで受け入れられない部分、要求事項を記載します。

オーダー毎の納期管理

複数のオーダーを同時並行で処理をしていくためリスト等で管理していく必要があります。

私が貿易事務をしていた時は毎週インド人の物流担当と電話会議を行い、オーダーの状況について意思疎通を図ることを行なっていました。

この電話会議でインド人からこのオーダーはもっと納期を早くしてほしい等様々な要望がくるのでそれに合わせて、製造部門や発注先に交渉をしていました。

出荷書類(Invoice, Packing list 他)の作成

製品の納期が来たら製造部門や外注先から梱包明細をもらい、その情報を元に出荷書類(Invoice, Packing list 他)の作成を行います。

・Invoiceとは出荷製品の金額が書かれている明細

・Packing listとは出荷製品を貨物として梱包した時のサイズ、重量の明細

基本的には過去作成した物を写して作成したら良いのですが、銀行を経由した特別決済(LC決済)の場合は特定の記載が必要だったり、客先との綿密な内容の確認をする必要があり、面倒な作業となります。

客先から作成した出荷書類を提出して承認を得ます。

製品出荷の準備

出荷にあたり、こちらが主導して運送会社を選ばないといけない場合(CIF, DAP 等)の場合は運送業者に出荷依頼をして出荷書類を提出して、貨物を託します。

一方客先が主導して運送業者を選ぶ場合(FOB, Exworks等)は客先から日本での運送業者を紹介してもらい、その運送業者に出荷を依頼します。

上記の依頼によりやっと製品をインド等各国に届けることができます。

代金回収の管理

出荷が完了したら今度は代金回収の管理を行います。と言うのも客先に応じて支払条件が異なるのでちゃんと期限までに支払われるように管理を行います。

この作業は会社によっては営業担当が行うこともあります。未回収となって上がってきた案件は営業部員が催促を行います。

貿易の仕事の内容に関しては以下の記事も参照してみてください。

貿易事務の仕事の辛い点とやりがいに関して

私の過去の経験から貿易事務での仕事のやりがいについて紹介します。

ミスの許されない点は緊張感のある仕事である

発注の処理、納期の通知、輸出の手続きなど日々様々な作業を同時並行で行っていきます。

件数が多くどんどんさばいていかないと言うプレッシャーがあり、かつミスも許されないので辛いこともあります。

私も過去、間違えた発注をしたり、忘れていたり、間違えた仕向地に輸出をしてしまったり様々なミスをして、責任を問われ経緯説明書を作成することとなってしまったことがあります。

しかしこれらのさばきがスムーズにできるようになってくると、様々な人から信頼され頼られるようになります。

この地域、この担当に関してはこの人に聞けば良いというような感じです。

私もインド地域の貿易事務をしていたときはやはり数多くの件数の処理をこなしていたので、インドのオーダー・納期・出荷状況等に関しては私に何でも聞くという流れができていました。

ジョブをたくさんさばくと言う重要な業務をしているからこそ大変さがありますが、その中で人から頼られるとやりがい、楽しさを見つけることができる場合もあるでしょう。

客先の様々な要求にも答えていかないといけない

普通のオーダーをさばいていくだけならいいのですが、以下のような特殊なケースもたくさん発生します。(あくまで一例です)

  • 受注製品が特殊で製造現場・営業と再調整しないといけない
  • 急ぎの要求納期に対して製造現場と交渉する
  • LC(信用状)による製品出荷を行う

これらのような対応も同時並行で行なっていきます。

しかしこれらのイレギュラーの仕事ができるようになると上記のように社内で信頼がおかれるのと同時に客先からの要求にも答えられていく事で徐々に客先からも頼られる存在となります。

担当した国の事情に精通することができる

貿易事務をすることで担当した地域の国の事情に精通することができるようになります。

私は貿易事務をしていた時はインドを担当していたので以下の様な点に気がつきました。

  • インドでは出荷時に契約書でガチガチに記載して貿易で利益を得ようとしてくる傾向があり、こちらも不利益を被らないよう気がぬけなくなる。
  • インド人はのんびり気質であり、自社や自分に感心のあることしかしてくれないことがある(こちらが得たい情報は何度も催促して聞く必要がある)

上記の様にインド人と取引をすることで様々な事情を知ることができ、これらに精通することで地域的な専門性を高めていくことができ、貿易の業務に関わる楽しさを実感することができます。

貿易の仕事のやりがいに関しては以下の記事にて記載しているのでもし興味がありましたらこちらも参照ください。

貿易事務を行ってみての想像とのギャップ、実際のあるあるについて

私がメーカーで貿易事務の仕事をしていたときに感じた、想像していた仕事内容とのギャップと実際のあるあるについて紹介をします。

貿易の仕事でも日本語しか使わない担当もある

語学を使いたいと考え貿易事務を志望したのに、全く機会がなく日本語のみになってしまう場合もあります。

それは私の会社ではそうなのですが海外(中国、韓国等)取引先の現地担当者が日本語を流暢に話せる場合です。

製品納期の通知、出荷時のやり取り等で現地の取引先と英語を使うことがほとんどですが、たまにそう言ったケースがあります。

あとは日本国内の運送業者、社内製造部等のやり取りは当然日本語で行われるため1日語学を使わずに終わってしまいます。

事務職だけどコミュニケーション能力がすごく求められる

事務職なのでただ機械的にパソコンに入力して、出荷書類を作って、それを提出して、事務作業をすれば良いのかと思えばそんな事はありません。

顧客からの要求納期に従い製造部の生産管理部との納期調整、そして客先への通知、また出荷書類の客先との確認等結構込み入った内容の確認が日々行われます。

客先の要望をうまく聞いた上で、社内に反映させないと行けないのでスムーズな会話・交渉が求められます。

営業に成果を全て持っていかれる

どんなに顧客との納期調整、出荷の調整を行なっても目に見える数字として金額で評価されるのは事務ではなく営業です。

したがってどんなに苦労して顧客の最適な納期に調整できても、無事売上をあげることができてもなかなか評価されることが少ないです。

更に営業側に役立つ事をしている素振りを見せないと悪い評価につながります。

将来自分の仕事がAIに乗っ取られるのではないかと不安になる

事務系の仕事は一般的に自動化が進み将来的に入力などの仕事はなくなっていきます。

従って将来事務系の仕事は無くなってしまうのではないかと不安の思う方も多いかもしれません。

私個人的にはいくら自動化が進んだとしても、以下のような理由から貿易事務の仕事は無くならないと考えます。

1.客先の要求に合った納期調整、社内の製造部門との交渉などのコミュニケーションが求められる仕事は自動化が進んでもなくならない。

2.いくら自動化が進んでも上記のような専門的な内容がミスなく行われているのか最終チェックを結局人が行わなければならない。

上記の理由から当分は貿易事務の仕事は完全には無くならないと考えます。

具体的な貿易事務の仕事の真相、実際のあるあるについては以下の記事に記載おります。もし興味がありましたら参照ください。

フォワーダー(運送業者)とメーカーの貿易事務の違い

私は上記の通り物流業界(海運会社)で勤めた経験があり、メーカーの貿易事務との違いについて述べていきます。

フォワーダーの貿易事務に関して

フォワーダーの貿易事務の仕事内容はざっくりですが以下の通りです。

  • 客先(メーカー、商社等)から受注を受け輸出通関の申告に必要なInvoice(輸出品の金額明細)、Packing list(貨物の梱包明細)を受け取る
  • 貨物の引き取りを依頼して貨物を港、空港付近の倉庫まで運送してもらう
  • 船会社、航空会社に貨物のスペースを依頼する
  • 通関部隊の人に上記受け取った書類を渡し輸出通関申告を依頼する
  • 出航日にBL、Air waybill (貨物の輸出先現地での引換券のようなもの)を作成し客先に渡す。
  • 税関から発行される輸出許可証と請求書を客先に渡す
  • 現地の取引先代理店に輸出品の情報を渡して現地の貨物引き取りへの対応を依頼する

その他いくつも上記にまつわる細かい作業があり、同様に複数のjobをマルチタスクでこなして行きます。

メーカーや商社が客先となっている点が一つ大きな点で

また、輸出における通関処理、船会社、航空会社へのスペース予約等、輸出手続きの部分での作業が多く行われていることが特徴です。

フォワーダーとメーカーの輸出業務の違いについて

メーカーは製品に対する手配、納期の確認を行いその製品を海外の客先に届けると言う広い範囲での業務を行います。

一方フォワーダーは輸出入の部分に特化していてメーカー(商社)から委託を受けて必要な諸々の輸出手続きを専門的に行っていきます。

それぞれの貿易事務で身につく知識について

メーカー(商社)の貿易事務に関しては取扱う製品品目、仕向け国が限られているのでその担当する業種に関してのみ専門知識がつきます。

私はメーカーに所属してインドに電子機器を輸出すると言う業務を行っていたので、電子機器の製品事情についてや、インドの地域的な事情(銀行を経由したLC決済が頻繁にある、貨物が現地到着後1日ですぐ貨物保管延滞金デマレージが発生するなど)に関してある程度精通することができました。

一方フォワーダーに関しては扱う貨物は幅広いです。

客先はあらゆるメーカー(商社)なので大型貨物、長尺貨物も扱いますし、場合によっては食品、冷凍品や危険品等の出荷を扱う場合もあります。

また国地域に関してももちろんフォワーダーによって得意不得意はありますが幅広く様々な地域への輸出を担当することが多いです。

したがって身につく輸出の専門知識はフォワーダーの方が幅広いしより専門的です。

仕事がハードなのはフォワーダーの貿易事務

私はフォワーダーとメーカーのどちらにも勤務したことがありますが、やはりフォワーダーの仕事の方がハードな印象です。

と言うのもメーカーには製品の魅力で顧客がつくので、輸出業務の対応に不備があっても製品が人気である限り顧客はあまり離れていきません

しかしフォワーダーの場合、そう言ったハードと言うものが限られたものしかないので(もちろん特定地域のチャンネルの強み、自社倉庫の有無等ありますが)きめ細かいサービスで勝負しなければなりません。

そして貨物の破損、飛行機の台風による遅延等不可抗力な出来事があっても、常に詳細な経緯説明が求められたりします。

そして信頼を失うと顧客離れに繋がるので、それを避けるために必死で客先となるメーカーや商社を繋ぎ止めておく必要があります。

しかしある意味責任感・緊張感を持って、業務に携わり信頼を勝ち得ていくことが好きでやりがいを感じるのであればフォワーダーの貿易事務の方が向いているかもしれません。

貿易事務の仕事についてまとめ

以上、メーカーの貿易事務の仕事内容についてあらゆる方面からお話をしてきました。

貿易事務の仕事はミスの許されない仕事で大変な事が多いですが、やはり仕事がさばけるようになってきて、貿易に関する専門知識がつくにつれて、仕事はどんどん楽しくなっていきます。

上記で述べたことは私が働いている会社での経験を元に述べた内容なので、会社によっては当てはまらないことも多くあるかもしれません。しかし共通点も多くあると信じております。

以上、語学を生かした仕事に就きたい、今後貿易事務の仕事に関わっていきたいと考えている方に参考になれば幸いです。

Hiro

初めまして。ヒロと申します。
電子機器のメーカーで海外営業部に所属しインド地域を担当しており日々インド人との交渉に悪戦苦闘しております。
語学(英語・中国語)に関して役立つ情報や出張・旅行で経験したことの共有をできましたらと考えております。
TOEIC 920点、HSK5級(202点)取得しており、現在中国語に関してはHSK6級取得に向けて勉強しております。
Twitterもやっていまして、もし興味がありましたら覗いてみてくださいね!
https://twitter.com/Hiro__Rod

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I am Hiro from Tokyo, Japan, born and raised here.
I have working experience in Japanese companies (logistics and manufacturing) as an international sales for almost 10 years.
I have experience of living in NZ for 1 year & China (HK & Shanghai) for 2 years.
I'd like to introduce distinctive Japanese culture

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