仕事で貿易を担当している方は海外の客先との売買契約書を読む機会があると思います。
ページ数が多く、また全ページが英語なため圧倒され萎えてしまう人も多いかもしれません。
しかし突然海外の取引先から数十ページにも及ぶ契約書をポンと渡されて、注意せずに見過ごしてしまうと後々大問題になってしまう可能性もあります。
何も意思表示をしないと海外取引の慣習で契約書の同意したと見なされてしまいます。
そこで、契約書を読む際にメーカーの海外営業の観点から最低限注意した方が良いと考える基礎的な点について紹介します。(もちろん貿易対象の商品、会社の方針によってみるべきポイントは異なります)
また、今回は日本から海外に商品を輸出・販売する場合を想定します。
①支払い条件&インコタームズ
支払い条件で1番安心なのは前金です。100%支払いを受けた上で商品を出荷します。他には、出荷日を基準に30日等の支払い猶予を与えることがあります。
こちらは取引先との信頼関係で決めることですね。スポットの取引であれば回収が難しくなるので前金は必須です。
ひどいケースだと、何%かの支払いは現地で製品の使用が行われてから等、実際の支払い期日が書かれていない場合です。客先の都合によりいくらでも支払い期限を延ばされてしまう可能性があります。極力そういった内容の支払いには合意しない方がいいです。
私の会社はインドの取引先とこう言った契約(現地でのプロジェクト稼働してから10%支払い等)を交わしてしまい、何年も回収に苦しんでいます。
また支払い条件にはインコタームズが同時に記載されています。EXW、FOB、FCA(航空運賃、海上運賃は客先持ち)の条件の方が、こちらが運送の責任を持たなくて良いのでおすすめです。
もしCIP、CPT等の条件(航空運賃、海上運賃はこっち持ち)の場合はしっかりリスクも加味した上乗せ運賃が請求できているか確認しましょう。
たまにCIP等の条件にも関わらず、運送費は支払い明細に記載されていないことがあります。
それは運送費がこっち持ちなのに、こっちで吸収して、客先には請求しないでくださいという意味なので気をつけてくださいね。
②製品の保証
もし製品に不具合があった場合、1年保証などメーカーが製品保証をしてくれる期間がほとんどの場合あります。
そのメーカーが決めている期間よりも契約書では長くなっている場合注意が必要です。
その延長期間は修理費用、修理の為に運送費は有償となってしまうが、どこが責任を持つのか、それとも契約書の内容を改訂するよう要求するのか判断する必要があります。
③損害賠償の条項
損害賠償もいくつか種類があり、まず商品の納期遅延により発生した損失の場合です。
その場合受注書の金額の最大10%まで損失補填で減額される可能性があるなどの記載があります。
会社としてその内容を受け入れることができるのか、将来的な納期遅延の可能性も加味しつつ承認をする必要があります。
もう一つ商品の瑕疵により損失を被った場合の損害賠償条項もあります。例えば商品が爆発して人的被害を被った場合がわかりやすいです。
こちらも万が一の場合に備えて記載内容で問題がないか確認する必要があります。
通常は受注金額と同額の値を最大の補償額等としたり上限を設けます。でないと間接的な損害も含まれ途方もない金額まで膨れ上がってしまう可能性があります。
④製品の納期
契約書には製品納期が書かれていることがあります。この納期は製品を納入するのに充分な期間かどうかを確認する必要があります。
最近ではコロナの影響で半導体等が使われている製品は納期がいつもより遅くなる傾向にあるため、必須の確認事項です。
上記の納期遅延の損害賠償とセットで確認してください。
⑤不可抗力条項
もし天災、戦争、テロリズム、疫病等が発生した場合、売り手も買い手も契約不履行に責任を負わないという条項です。
コロナウイルスは疫病であるため、もしコロナが原因で商品の納期遅延が発生する場合はこの条項が当てはまります。不当に納期遅延の賠償請求をされないよう、内容・条件を確認した上で承認してください。
終わりに
以上、契約書で注目すべき内容を紹介しました。
売買契約書を受け取ってからは反論がある際なるべく早めに(理想は受け取って1週間くらい)メール等で意思表示をして下さい。そして具体的にどの部分が受け入れられないかを詳細に明記してください。
もし意思表示が遅れてしまっても、契約書で期限が書かれていても、気がついた時点で反論すれば、時々受け入れられることもありますので泣き寝入りはしないでくださいね。
最後に私は法律の専門家ではなく、あくまで海外営業部での経験を元に語っております。
不当な契約内容で損害を被らないよう、上記の点に関して参考になれば幸いです。
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